ハナノサキカタ(旧名:道産子、ベナンへ行く。)

ベナン・ジュグーでJICA青年海外協力隊・野菜隊員として活動。(2017.10〜2019.10)

犠牲祭(タバスキ)

2018年8月21日はイスラム教で最も大きなお祭り、イード・アル=アドハー(犠牲祭)でした。西アフリカではタバスキ(la fête de la tabaski)と呼ばれています。ヒジュラ暦12月(巡礼月)の巡礼最後の日に当たります。犠牲祭の起源は旧約聖書の創世記22章に書かれているイサクの燔祭。アブラハムが自分の息子イサクを生贄とするよう神に言われ、捧げようとしたその時ヒツジが現れます。そして、天使が彼にヒツジを生贄とするよう言ったのでした。さて、このお祭りは4日間続くそうですが、ベナンではその初日が祝日となっています。朝に集団礼拝をして、その後家に帰って羊などの動物を生贄として捧げ、肉をみんなで分け合って食べます。私の任地であるジュグーはベナン国内で最もイスラム教徒が多いです(多分)。こちらがどのような様子だったのかお伝えできればと思います。

f:id:aqua333:20180824054720j:image

タバスキの前日、ジュグーで何度も見かけた光景。ウシを買った人が家まで連れて帰る様子。牛一頭20万〜30万Fcfa(4〜6万円)くらいするそうです。ちなみにベナンでは一回の食事が100〜500Fcfa(20〜100円)ほど。牛を買うお金はどこから出てきたのだろうか。

f:id:aqua333:20180824054913j:image

ヒツジを買った人の子供たちが草むらでごはんを食べさせている。ヒツジ・ヤギは一頭2〜6万Fcfa(4000〜1万2000円)ほど。
f:id:aqua333:20180824054901j:image

前日の夕方から近くのバリエヌ村へ行きました。私とともにタクシーに乗せられた、明日食べられるであろう羊。
f:id:aqua333:20180824054922j:image

バリエヌ村は明日のお祭りの準備でにぎやか。美容室で女性は髪を編んでもらったり、男性は綺麗な坊主にしてもらったり。
f:id:aqua333:20180824054845j:image

彼らも明日には肉なのだろうか。

f:id:aqua333:20180824055256j:image

翌朝、9時に始まるという集団礼拝の会場へ9時過ぎに出発。さすがベナン、時間通りには始まらない。
f:id:aqua333:20180824055346j:image

モスクには入りきらないので、広場にて。最前列は村の権力者だろうか。繋がれている立派なツノのヒツジは集団礼拝の後、生贄となります。
f:id:aqua333:20180824055339j:image

続々と人が集まってきました。前は偉い人、次に男性、そして女性と子どもたちという席順です。
f:id:aqua333:20180824055354j:image

予定より30分ほど遅れて集団礼拝が始まりました。
f:id:aqua333:20180824193858j:image

アッラーフアクバル。神は偉大なり。すごい人数、500人はいるだろうか。

f:id:aqua333:20180824193336j:image

10分くらいでお祈りが終わり、多くの子どもたちと少しの大人たちが帰っていきました。女性たちが飴やビスケットを配っています。子どもたちはそのお菓子の奪い合いを始めます。
f:id:aqua333:20180824055942j:image

続いてイマーム(指導者)の説教。雨で傘を差す人は皆無に等しいベナンですが、こういう時は傘を使うようです。
f:id:aqua333:20180824055932j:image

最後に先ほどのヒツジが生贄となりました。
f:id:aqua333:20180824055951j:image

この儀式にはみなさんあまり興味が無いらしく、説教が終わった時点で人々はどんどん帰っていきました。

f:id:aqua333:20180824060800j:image

来るのは遅いが帰るのは早い、それがベナン
f:id:aqua333:20180824060819j:image

村の女性たちはせっせとごはん作り。こちらはヤムイモを蒸し、餅状にしてイニャムピレを作っている様子。犠牲祭の前日日没までと当日の礼拝終了までは断食をするので、みんなお腹ペコペコです。
f:id:aqua333:20180824060750j:image

歩いていたらこちらの男性に呼ばれてイニャムピレと肉をご馳走になりました。イニャムピレは辛くて美味しいソースにつけて食べます。
f:id:aqua333:20180824060810j:image

こちらもイニャムピレ作り。ベナンの人々は写真好きが多い。

f:id:aqua333:20180824063128j:image

ゴマを潰してソースの材料にする女性。ゴマはこの辺り、アフリカのサバンナ原産。

f:id:aqua333:20180824061419j:image

歩いていたらまたイニャムピレをご馳走になりました。ソースはもちろん肉入りです。
f:id:aqua333:20180824061447j:image

家に戻ると生贄となったヒツジが横たわってぃした。
f:id:aqua333:20180824061356j:image

ここがバリエヌ村でいつもお世話になっている家。ベナンの家は大抵長屋で、各部屋にいろんな人が住んでいてイメージ的には日本のアパートのような感じ。シャワーやトイレは共用で別にあります。いろんな人が家族のように暮らしています。
f:id:aqua333:20180824061412j:image

木につながれていた牛を横に倒して首のヒモを解き、3本の足をくくります。
f:id:aqua333:20180824061436p:image

暴れる牛を若い男性たちが抑えつけ、村の権力者(?)が首にナイフを入れます。ナイフを持った集団が村を回っていたので、儀式なのだなぁと思いました。

f:id:aqua333:20180824193324j:image

喉の一部をこのように切り、枝に下げていました。理由は聞かなかったけど、これらは先ほどのナイフ集団が持ち帰って食べるそうです。
f:id:aqua333:20180824193313j:image

こちらでも牛が犠牲となっています。
f:id:aqua333:20180824193846j:image

真剣な表情でそれを見つめる子どもたち。数年後には彼らが向こう側にいるのであろう。

 

村を歩けばこっちに来いと肉をもらい、食べ歩く1日でした。そんなに生贄にするか?と思うほど多くの牛や羊が犠牲となっていて、いやいやもういいでしょ、とか、普段肉を食べないのに犠牲祭にはこんなにたくさんの肉を食べるなんて、月に1回犠牲祭があればベナンの子どもたちの栄養改善になるのに…とか色々と思うことはありましたが、これがイスラム教の大切なお祭りであることを感じることができました。来年も見にいきたいと思います。

 

 

※血の吹き出るような写真や動画も撮影はしましたが、今回ここには載せません。見たい方には個人的にお見せしたいと思います。